一般社団法人ウーマンエンパワー協会

【取材】 どれだけ個の力を活かそうとするか管理層の度量が求められる/グローカルマーケティング株式会社

約10分

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。

今回は、新潟県に本社を置くグローカルマーケティング株式会社に、ダイバーシティ&インクルージョンや女性活躍推進の取り組みを伺いました。

<企業概要>グローカルマーケティング株式会社(新潟県長岡市)

設立:2007年

資本金:2,700万円

スタッフ数: 社員45人(役員含む)

事業内容:マーケティング支援事業、人財採用・育成定着支援事業、トキっ子くらぶ事業

(取材日3月25日時点)

Q. 御社の3本柱の事業について教えてください。

私たちは地域の中小企業様の売上アップを、マーケティング支援・人財採用・育成定着支援の両輪で実現へ導くコンサルティング会社です。マーケティング支援では、戦略策定やリサーチ、販売促進の支援を伴走型のコンサルティングやSNS活用や生成AI活用なども含めたセミナー・研修を行っており、その支援策の1つとして子育て優待カードの会員組織「トキっ子くらぶ」を2007年に発足し運営しています。トキっ子くらぶでは、特典を提供いただける協賛店を増やしたり、会員ネットワークを活用してファミリー向け情報の発信等を行っており、現在新潟県内の子育て家庭約8.2万世帯、新潟の子育て家庭の約半分ご登録いただいております。

また、人財採用・育成定着支援では、県内の製造業・建設業・アパレル業など多様な業種・規模の企業様の採用にむけた戦略設計から直接的な支援、また定着に向けた研修などでのご支援もしています。

Q.社員は女性が55%、女性管理職57%、過去3年間の産育休取得は100%とのことですが、女性および全社員に向けた取り組みについて教えてください。

新潟県のハッピーパートナー企業に登録しており、一般事業主行動計画に基づいて育児休業取得予定者及び取得後の職場復帰者への面談、サポートを行っています。

また、2019年からは「ビジョンメイキングシート」という独自のシートを使って、自身の人生ビジョン・キャリアプランを社長含む全スタッフに描いてもらっています。

ビジョンメイキングシートは、働く先の人生で何をしたいのか?人生のありたい姿は何か?何が自分にとって幸せなのか?そしてそれは、グローカルマーケティングでの仕事を通じて実現できそうか。どのように繋がっていきそうか、という個々の人生ビジョンやキャリアイメージを自分でまずは考え描き出してみて、それを毎年見直したり書き加えたりしながらより明瞭なシートを作っていきます。それを様々な機会で共有したり発表したりして、お互いの叶えたい人生ビジョンを応援し合う仕組みと風土を作っています。それは、私たちグローカルマーケティングのビジョンの一つ「物心両面の幸せを叶える」ことに繋がっています。

ビジョンメイキングシートの共有は、月1回の全社集会GET(Glocal Energy Timeの略)にて月一人ずつ発表の機会をもうけています。先月(2024年3月)は、代表今井の発表の番でした。社長の生い立ちや実現したいことはいつも耳にしていても、ビジョンメイキングシートを通じて発表すると、代表としてもそうですが一人の人間としても応援しついていこう、と思える、私はそんな風に思いました。また、GETという場は、数値共有はもちろんありますが、半分近い時間は次の1ヵ月間仕事で走り切るためにエナジーを溜める場、そのために「全員で会う」ことが主目的です。ハイブリッド勤務で在宅が多い人やコンサルタントとして飛び回っている人も必ずリアルで集まる場となっていて、みんなに合えることを心待ちにしている社員も多く私たちにとっては欠かせない時間です。

ビジョンメイキングシートの通り、会社のビジョンの上位階層に、個々のビジョン(人生におけるありたい姿)がある、という考えを大切に経営しているので、マネジメントの観点からも、「この人はこう成長していきたい」「この人はこれが強み」ということをしっかり理解して適材適所でマネジメントを行い、成果が最大化できるような組織運営をする風土を醸成しています。

Q. 活躍最前線の社員やマネージャーなど(2023年度は)男性4名の方が育児休暇を取られたということですが、リソースの限られるなかどのように回されていたんでしょうか?

例えば、営業部内ではマネージャー含む3人の男性社員の育児休業取得と、女性社員一人の産休育休取得が予定されていたのですが、その男性3人は少しずつ時期をずらして取得する相談はしてくれていました。

休暇にあたっては何の遠慮もなく抜けてもらうようにしないと、次の人が続きません。引継ぎ者と相談したり、上長が業務を一部引き取ったりしましたが、引継ぎを受ける側も大変だとネガティブに受け取る社員はいなかったです。

2週間~4週間の育休取得の間は、本人の電話は留守番電話で「育休中です」という旨が流れるようにしており、メールは上長へ転送という形で上長がメール対応していました。

ただし、休み方は本人の希望に合わせていて、一切の業務情報に触れずしっかり休みたいという人もいれば、復帰して浦島太郎状態になるのは嫌だから対応はしなくてもメールは閲覧したい、など人それぞれです。

育休は分けて取得できるようになったので、2月に2週間休んで、もう1回5月のゴールデンウイークに合わせて育休を取る予定の男性社員もいます。男性の育児休業取得のルールが昨年より柔軟になったことも、取得した本人たちは気持ちが楽だったと言っていました。

数人育児休業を取得したからと言って仕事が回らなかったら、産育休に限らず何かあったときに回らないリスクということですので、有事に備えるための自分への練習とも思っています。

また、日報や議事録など情報はクラウド化していますし、当社ではコンサルティング業では珍しく全お客様に営業担当(プランナー)とコンサルタントの2名体制となっていることも、社員にとっても休みが取得しやすく、お客様のフォロー体制としても結果的に良い形となっています。

また、これは偶然そうなって気づいたのですが、男性社員が育児休業を取得すると、女性社員が育児休業から復帰する際の男性社員側(マネジメント側)の配慮・サポート意識が高まりました。女性の復帰前社員に対する、目標設定や仕事におけるサポートなど、男性社員側の意識の高さを感じました。私はこのことが大変嬉しく思いました。

Q.女性活躍の推進事業で企業さんに助言アドバイスもされているということですが、道半ばのこのテーマで何が重要だと感じていますか?

やはり経営陣とマネジメント層が、社員個々の力を発揮してあげたいという考えを、社内で一致して強くもつことが一番大切だと思います。

男女関係なく、その人の特性、強み、やりたいことを理解して、個人の力を最大限生かそうとしているか、だと思います。それが組織の成果の最大化に繋がる最大の要素と考えています。集団ではなく、どれだけ個で見られるか、見ようとするか。

全ては許容できなくても、経営・マネジメント側が「個を知ろうとする」「個の力に気づこうとする」その気持ちと行動が社員と経営層を繋ぎ、結果定着にもつながると思います。

人財不足でお悩みの企業様も増えているなか、経営層側が社員に近づこうとする姿勢をより持つ必要性を理解しより成長することが、私も含めてもっと必要だと考えています。

昔からの男性社会の風土をもつ新潟県内のとある製造業さんが、先日普段の仕事おいて困っていることや今後のキャリアイメージについて、初めて社員にアンケートと面談を行っておられました。そこであがった「なぜ女性がこの仕事を?・・」という疑問に答えて、女性だけの制服利用を廃止し、お茶くみは全員で行うことにした、と即現場で変更できることに着手されておられました。そのうえ、面談を受けた女性社員の方は、まず自分達の話しに耳を傾けてくれることが嬉しいといっていた、と、面談をした人事担当の方も喜んでおられ、社員の声を聞くことの重要性を感じておられました。まずは1人1人の声に耳を傾けるころから始めてみるということもとても有効だと思います。

Q.働く側(社員)にはどういうことをメッセージングしているでしょう?

弊社の地域創造と物心両面の幸せを追求するという2つの「ビジョンへの共感度」は1番重視して採用しているのと同時に、1人1人に経営参画意識を持つように意識づけています。例えば、生産性の向上においてです。「今のこの移動時間は本当に必要なのか?」とか。 などミクロ単位での効率化やコスト削減をする意識を各自がもつことで生産性向上に繋がります。全社集会でディスカッションテーマにすることもあります。普段はそういった生産性、私たちの言葉では「時間当たり付加価値」の向上を大変意識しているからこそ、アナログ開催のGETはより重要視している、ということもあります。

Q.予算やリソースが限られるなかでもできる女性活躍推進やD&I推進の取り組みについて助言はありますか?

まずはやっぱり、経営層やマネジメント側が社員1人1人を知ること。そのための「1on1」は意識をかえればどの企業でもすぐにでも実施できることだと思います。

社員を知るためにはまず、上長側が自己開示していくことが重要だと思います。なぜなら上長側が自己開示すると部下も自己開示しやすくなりより意見を言ってもらえるからです。私たちは1on1を5年程前から実施しており、また近年より注力して実施います。私たちは例えば代表との1on1は、面談と呼ばず「ほっとティー」と名付け、ほっとする時間、とすることを心掛けています。仕事以外のことも含めて色んな話をします。部署によっては毎週のように30分上長と雑談などを含めた時間をとっている場合もあります。

なんでも言える関係性をつくっていくことでいざという時のパフォーマンスに繋がりますし最終的には社員が自分の力を発揮しやすくなるため組織全体の生産性向上に繋がります。

中小企業のほうが1人1人とコミュニケーションを取りやすいと思います。

何をしゃべっていいかわからないというお声もよく聞きますが、ビジョンメイキングシートのような、共通のネタがあると便利ですし、実はオンラインでの1on1も、画面越しの対面のため少し恥ずかしさが減り、初めての場合はお勧めだったりしますよ。

当社は経営層とマネジメント側が「個々人をいかす」という考え方においてしっかり同じ目線を持てていると思っています。また、それにそった採用・マネジメント・配置を、もちろんまだまだ反省点も多々あり成長中ですが、意識を持って取組めていると思います。 特別なことや大それたことをしているわけではないですが、大切にすべきこと、当社で言えば「会社のビジョン」と「個人のビジョン」を全員で大切にして日々業務に取組めるよう組織力を強くしていくことが、社員の活躍と組織の成果の最大化にとって大切ではないかと考えています。

グローカルマーケティング株式会社

取締役CCO 森本寛子

高校卒業後渡米、大学卒業後現地音楽教室講師を経て、JAL Passenger Services America, Inc.に就職。帰国後、株式会社リクルートへ就職。人財採用の提案営業や求人誌の新拠点立上げ・創刊に携わり、営業・採用戦略立案・チームマネジメント等をの経験を積む。結婚・出産、異業種での勤務経験後、2015年グローカルマーケティング入社、2022年1月より現職。

一児の母。週末は息子のサッカーと電車の旅(息子がハードな乗り鉄)に明け暮れている。年に1回は鈍行列車で息子と長距離旅。鈍行列車で広島や北海道、ローカル列車旅も。どんなに不便でも電車で目的地にたどり着く方法を子ども自ら考えて実行することで、知力・体力・行動力・忍耐力・サバイバル力が養われる鉄オタ子育てを楽しんでいる。


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