一般社団法人ウーマンエンパワー協会

【取材】社会貢献と利益追求どちらも叶えるゼブラ企業に/株式会社SAKURUG

約7分

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。

今回は、働きがいも経済成長もどちらも実現したいと語る(株)SAKURUG(前回のウーマンエンパワーアワードでイノーベーション賞受賞)の執行役員で時短ママでもある木村杏子氏にお話を伺いました。

<企業概要>株式会社SAKURUG(本社:東京都渋谷区)

設立:2012年

資本金:5000万円

従業員数:87名(2024年9月現在)
女性社員比率:51.56%
女性管理職比率(役員除く):33%

事業内容: QDXコンサルティング事業、Sangoport(DEIを推進する採用マッチングプラットフォーム)事業

Q. 社員の6人に1人くらいが時短ママさんだということですが、どのような仕組みで運営されているのでしょうか?

5時~22時の間で就業時間と業務を月単位で調整できる「短時間スーパーフレックス制度」を導入しています。

例えば月80時間働きたい経理の方が、月末・月初は忙しいから1日7時間、月中は1日3~4時間にしたり休みを増やしたり、という調整をポジションに応じてできます。勤怠ツールをベースに、見通しが立ちにくい急なタスクや家族の行事が多い時期は、都度上長と相談しながら調整していますね。

SAKURUG Women’s保健室では、提携先のオンライン診療でピルが自宅に届くサービスを利用できたり、ピル処方代や漢方内科受診時の費用を月2500円上限で補助したりする制度があります。

一方で、弊社は高齢の方、障がいがある方など様々な方を雇用しています。 発信が増えたことで女性向けサービスをご紹介いただく機会も増えたのですが、女性向けばかりに偏り過ぎないように、全体の施策バランスは逆に気を付けていますね。

Q. 働き方やキャリアの支援、文化醸成で取り組んでいることはありますか?

代表は繰り返し「家族より大事な仕事はない」というメッセージを発信し続けています。

また、サクラグのカルチャーを知る「philosophy book」による文化の共有もしています。伝達と浸透は全く別だと思っていて、繰り返し触れることに意味があると思っています。入社時研修や社内チャットなどでも、折に触れて伝え続けていますね。

手を挙げたメンバーは、弊社代表による「遠藤塾」というキャリア研修に参加できます。

テーマは経営戦略からファイナンスやIR、経営における苦しい意思決定の疑似体験など、踏み込んだ内容を学んだりします。

社内では最近「隣の多様性」をキーワードにしており、女性活躍だけでなく、障がい者支援、若者の貧困など、様々なテーマで外部講師をお招きして学ぶ「DEIラーニング」を全メンバーを対象に開催しています。

自分が子育て中だからこうしてほしい、私が性的マイノリティだからこういう制度をつくってほしい、といった当事者の希望は大変貴重ですが、行き過ぎるとなぜか権利の奪い合いのようになりかねない矛盾が生まれてしまいます。

そこで、自分以外の多様性=「隣の多様性」に目を向けて、自分たちに何ができるか?という視点でものを考えたいなと。例えば、若手がシニアのためにできることはないか?とか、自分と違う宗教を信仰しているメンバーのために何ができるか?というマインドを育てています。

Q. 「働きがいも経済成長も」に共感されているサクラグさんですが、両方を追求することが経営にプラスだと実感されているということでしょうか?

弊社は従業員の健康や社会貢献性と、利益追求のどちらも叶えるゼブラ企業(企業利益と社会貢献の両立を重視するスタートアップ企業のこと)を目指しています。

この一見相反するものが両方叶えられているのが理想ですね。

経済成長だけを突っ走って追いかけるのも1つの選択肢ですが、自分たちの目指す社会は、それがしたいけれどできない人、頑張りたいけれど頑張れない人も社会の中心になれることです。自分を犠牲にばかりして誰かを幸せにできるのか?という価値観をベースに、双方がwin-winになれる形を目指していて、最終的にはプラチナ企業(働きやすさと仕事のやりがいの両方を高いレベルで追求する企業)という枠組みにも入っていくのが目標です。

より良い仕組みづくりのためには利益もしっかり追求していくことが大事だと考えています。

Q. その一環で新卒の賃金ベースアップもされたということですね。

はい、新卒初任給のベースアップ(25卒:32万円)と、社内の賃金アップを同時に進めています。去年も6名ほど新卒を採用しましたが、既存社員のベースアップができなければ新卒のベースアップという判断はできません。逆に賃金だけみて選ぶ新卒も弊社に合わないので、バランスが必要だと思っています。

Q. 変な質問ですが、そこまで経済成長や利益確保をできないよという中小企業さんにもおすすめな施策は何でしょうか?

「短時間正社員」の雇用を断然おすすめします。事例やノウハウを集めた短時間正社員受け入れガイドも公開しました。

これは例えば、法務や財務を採用したいけれど1人月採用するのは厳しい、というような中小企業こそ取り組むべき施策だと考えています。まずは週2~3の短時間正社員に活躍してもらい、企業が成長したら本人の希望にあわせてフルタイムに転換してもらうなども可能です。

例えば週15時間、月60時間などの短時間正社員のスペシャリスト採用で経理、上場準備、情シスなどの業務を支えられている企業さんもあります。

Q. トピックとして増えている男性の育休取得促進については何がポイントだとお感じですか?

役員や管理職の意識や文化だと思います。

弊社も取得第1号は取締役でしたが、社長から「いつ取るの?」と猛プッシュを何度も受けてやっと取得となりまして、その後メンバーやリーダークラスの取得に繋がりました。 どうしても上長が取得していないと「みんな頑張っているのにいいのかな」とメンバーは躊躇しますので、率先して上長が取るということが必要ですよね。

Q. DEI推進や女性活躍という文脈で進めるポイントは何だとお感じですか?

取り組みを進めることは大事ですが、まずは担当が推進の目的に「企業成長」があることを忘れないことだと考えています。

何のためにやるのか?それはビジネスを通じてよりよい社会を実現するために、企業として成長し続けるためでなければならないし、どんなに手の込んだ施策であっても、メンバーにとって受け入れづらいものであれば机上の空論になってしまいます。なので、土壌である文化醸成は本当に泥臭く取り組み続ける必要があると考えています。

それを前提に弊社の場合はポイントが3つありまして、先ほどお話した、

  1. 家族より大事な仕事はない
  2. 隣の多様性という文化づくりをし続けていることと
  3. 企業として成長し社員に還元されていること

だと考えています。

営利企業は事業と組織の成長を通じて利益を生み出しながら、自分たちを含めた社会全体をより良くしていけるところに醍醐味があると考えています。だからこそ、「働きがいも経済成長も」両方追いかけていくことは大事だと思っています。

木村杏子

■プロフィール
医療関連会社でのマーケ部門立ち上げや、産学協働の公共貢献施設での現場コミュニケーションリーダーを経て、2020年9月広報担当としてサクラグに入社。
2021年4月にD&I推進室長(現DEI推進室)就任。バックパッカーとして世界33ヶ国を旅した経験を活かしながら、サクラグで働く一人ひとりが「広義での多様性を認めること」や「世界中の誰ひとり取り残さないこと」を目標として行動できる組織づくりを目指し、広報とDEI推進室を統括。



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