一般社団法人ウーマンエンパワー協会

【取材】本質的な価値と課題に1つずつ向き合う/株式会社ニューロマジック

約6分

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。

今回は、エクスペリエンスエージェンシーとしてデザインで課題解決をする株式会社ニューロマジックの取締役執行役員である永井氏にお話を伺いました。

<企業概要>株式会社ニューロマジック

設立:1994年9月

資本金:61,617,580円

従業員数:97名(男性30.9%、女性69.1%)※2025年2月時点

事業内容: サービスデザイン、ブランドデザイン、コミュニケーションデザイン
コミュニティデザイン、サステナブルトランスフォーメーション
各種クリエイティブ制作、トレーニング、レクチャー、ビジネスディベロップメント

Q. 御社のデザインの強みは制作にとどまらないコンサルティング・設計の上流工程ということなのでしょうか?

まさにそうです。私は大学院時代にニューロマジックでインターンをしていてそのまま2018年に新卒として入社し、今もサービスデザイナーとして該当領域をみています。90年代〜2000年代初期は代理店ととも一緒に成長してきて、2024年に東京と福岡で上場をしました。デザインが10年・20年進んでいると言われる欧州の知見を学ぼうと、オランダにもオフィスを置いており、現地には女性のCEOもいます。

採用は現在インターンと、転職エージェント経由の中途社員が採用の基本で、スキルレベルと、他者への配慮を含むコミュニケーション力などカルチャーフィットの両面を重視しています。

Q. 全国の社員が在宅ワークで業務を回しているということですが、コミュニケーションや文化醸成で課題は出ていませんか??

日本全国の北海道から沖縄までと、海外にも社員がフルリモートワークをしているということもあって、築地にある本社にはほとんど人がいないことも多いです。組織運用と個人の幸せには、一部相反する面があってどこをどう重視するかだとは思っていますが、私たちは従業員が幸せに健やかに働けなければ企業価値には繋がらないと考えています。
90年代頃は当社も長時間労働や深夜残業が多かったようですが、法改正とともに業務効率化を進めながら働き方も整備してきました。
自分をただ犠牲にするのではなく、組織ルールの中で最大限、効率的に成果を出すということに共感してくれる人たちに参画していただいていると思います。

また、バーチャルオフィスを導入したり、クラウドベースで業務を運営したりはしていますが、やはり入ったばかりの従業員は孤立しがちということで、首都圏以外にお住まいの方には、年に2回利用できる「コミュニケーション出張」制度があり、会社が出張費を負担して従業員同士が対面で会う機会を設けるなど、100人規模の組織ダイナミズムを感じにくい点は、ワークショップで議論する場をリアルでもうけたりという対応はしていますね。 各個人が“個人商店化”してしまうと知見がたまりにくくなり、品質にもばらつきが出やすくなるため、ナレッジシェアや共同作業のためのツールも工夫を重ねているところです。

Q.  直近3年では産育休は女性9名、男性5名が取得されたということですが、どのように運営されているんでしょうか?

ライフイベントが重なる年齢層の社員も多く在籍していますが、当社はプロジェクトが比較的短期間で終了し、またメンバーが入れ替わる事業形態となっているので、早めに予定がわかればアサインの調整がしやすいです。

Q.永井さんが発足されてDEIチームをつくられたということですがどんな取り組みなんでしょうか?

色々な部署や役職の人で編成し、月2回、DE&Iをテーマに定例をしています。主に5つのテーマ「ジェンダーギャップ、LGBTQ、障碍者、多文化共生、育児・介護」を設定して推進しています。どんなステレオタイプや固定概念をもっているかを認識したうえで、「当たり前を疑い、どのように対話していくのか」を考える研修を実施したり、LGBTQ+当事者や多様な家族のかたちを法的に支援する、パートナーシップ・家族関係の契約サービスFamiee(ファミー)を導入しました。

Q. 課題に感じていることはありますか?

当社は「休みたい」と言いやすく、休暇もあたたかく送り出してくれる文化があるだけに、フォローしなければならない負荷が上がる社員が逆にものを言いづらいという点があるのではないかと仮説をもっています。

また、国内の女性管理職比率が11~12%で推移しているところ、当社は管理職の*52.4%が女性です。(比率は*2024年3月1日時点)
あえて女性を採用・登用したということはなく、働き方を整備して公正に評価していたら、結果的に自然と女性リーダーが増えた背景があります。
一方で、「時短のままがいい」、「管理職は興味がない」といった理由で、グレードが上がらない方も一定数います。
ただそれは、ライフイベントの多い時期に一時的に生まれる志向であり、一生続くものではないと思っており、
こちらからの働きかけが少なかったため、コーチングやフォローアップ面談でキャリア構築の支援はしていきたいと思っています。誰もが管理職になりたかったり向いているわけでもないので、リーダー以外のポジションを中小企業でどこまでつくれるかということも検討していきたいですね。

Q. DE&Iを推進していくうえで重要だと感じることはありますか?

他社さんからは、「女性向け施策を行うと、社内から”女性だけに下駄を履かせているのではないか”と反発がある」という悩みを聞いたことがあります。 私は、男女(ジェンダー)に限らず、人間関係のトラブルの多くは、 個人やどちらかが悪いのではなく、「システムが間違っている場合もとても多いと考えています。

例えば、トラブルの本質は誰かが悪いのではなく、意思決定者がきちんと決まっていなかったとか、スケジュール設定に余裕がなさすぎたとか、メンバー構成に問題があったとか。 程度の違いはあれど、誰もが働きづらい、生きづらい状態であるという構造的な問題に目を向けることが非常に重要です。

私たちはそうした「本質的に大事なことと課題」に真摯に向き合って、それを1つ1つ解消潰してきたからこそ、今の形があるのだと思っています。
もちろん、当社もまだ模索中の部分はありますが、引き続き本質に向き合っていこうと思います。

株式会社ニューロマジック
取締役兼執⾏役員 DEI担当 
サービスデザイナー/ プロジェクトマネージャー
永井 菜⽉

上智⼤学院グローバルスタディーズ研究科卒業。
2018年⼊社。 サービスデザイナーとして、ユーザー
インタビューなどの企画‧実施から、調査結果を基にしたサービスの体験設計やブランドデザインを担当。
2020年よりチームリーダーとして育成や同グループの
事業づくりにも携わる。

また、学⽣時代から多様性やEquity(公平性)について関⼼を持ち、修⼠課程では⽶国のマイノリティコミュニティを研究。
2022年よりDEI担当執⾏役員。2024年5⽉より現職。
プライベートでは⾷と多様性に関するZine「Sammys」の翻訳‧⽇本版を⾃費で出版するなど、公私共に実践に
取り組む。





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