一般社団法人ウーマンエンパワー協会

【取材】 中長期の育成で着実なステップを/大東建託株式会社

約6分

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。

今回は、建築・不動産業界の中でDE&Iや女性活躍推進をけん引している大東建託株式会社のダイバーシティ推進部の宮崎様にお話を伺いました。
2024年4月に女性管理職比率6.5%を達成し、次のフェーズに向けて取り組みを継続されています。

<企業概要>大東建託株式会社(東京都港区)

設立:1974年

売上高(任意): 1,731,467百万円 ※2024年3月

従業員数:8,885名 ※2024年1月

事業内容:建物賃貸事業の企画・建築、不動産の仲介・管理、およびガス供給などの関連事業

Q.男社会のイメージが強い建築・不動産業界ですが、女性活躍推進やDE&Iに取り組もうと思われた背景はあったのでしょうか?

職種として、業務や設計の新卒採用などは実は女性が半分近くを占めていますが、職種によって女性比率の差があります。
2015年にダイバーシティ専属部署を立ち上げ、女性活躍に取り組んでいますが、それ以前より当社は性別に関係なく成果を出す方を平等に評価し、女性も活躍はしていました。
どうしても営業や工事(施工管理)などの現場は女性比率が少なくなり、社員全体の女性割合は約16%(2024.3時点)となっています。
時代の変化に対応していかなければならないという危機感から進めていましたが、なでしこ銘柄の認定を受けてからの反響が予想以上に大きかったです。(なでしこ銘柄2022、Nextなでしこ共働き・共育て支援企業2024認定) 自ら子育てをしてきた社長の竹内もDE&Iや人的資本経営には力を入れており、「ジェンダー平等」「多様な人材の活躍」「働き方改革」「ワークライフバランス」を主軸に推進に取り組んでいます。

Q.その一環として、女性管理職比率の向上に注力されて、2021年10月に導入した「第一期女性育成プログラム」が2024年4月1日に終了したそうですね

2021年4月時点で4.9%だった女性管理職の比率が6.5%と過去最高を更新しました。具体的には、「優秀な女性を登用する」という考え方を改め、「資質のある女性を見つけて育成し登用する」という方向性にシフトし、クオータ制を導入しました。
女性管理職人数を設定し、各職種の執行責任者(役員)で3年かけて育成、登用していく形です。
また、女性活躍推進委員会を定期開催し、進捗状況を共有しながら登用する側の意識改革に取り組み2024年4月より第二期をスタートさせました。

2019年に昇進に対する意欲のアンケートをとったのですが、女性の50%、男性の30%が昇進を辞退したいと回答しました。
男性も意外と多いものなんだなと驚いたわけですが、女性の辞退理由の1位は「自信がない」(23%)、2位が「残業が増えたり休めなくなりそう」、3位が「責任が重くなるから」という回答でした。

そこで、女性教育プログラムを用意し、長期的なキャリア形成と自律的なキャリア意識の醸成を目的に、段階的な教育体制を整備しました。どうしても傾向として女性は、謙遜して自信がなかったり、間違った昭和の上司像を描いていて自分には難しいと感じています。
なぜ女性活躍推進が必要なのか?を伝えることに始まり、今の時代は昭和の指示・強制型よりも支援型で部下をサポートできるマネジメントが求められているということを伝えることで、肩の荷が降りる方も多いですね。
外部講座を受講してもらったり、社内外の女性管理職と交流の場も用意しており、 着実なスモールステップを少しずつ踏んで、昇進をイメージしやすくすることが大事だと考えています。

Q.社内の反応はいかがでしたか?

上司向けの研修も実施していて、女性を優遇する数合わせではなく、本人の意思を尊重して管理職になりたい人材を引き上げるという推進の趣旨には意外にもすごく素直に受け止めていただける方が多いと感じています。
どうしても昔の現場環境を経験していて長時間労働が大事だと考えている方は、時代や環境がそうだったので致し方ない側面がありますが、研修では「女性の心理ってそうなんだ」という気付きを得てくれる社員も多く、理解のある上司を巻き込み、少しずつ理解者を増やしていこうというスタンスです。
体育会系のようなカルチャーなので右と言ったら右に進むのは早い会社ですので、やると決めたらしっかり動いていきます。その中でも、先ほど触れたクオータ制は最も効果を感じることができました。

Q.健全経営ランキングを意識して働き方や評価制度も変えていっているということですがどんな内容なのでしょうか?

まず、組織横断PJとして「長時間労働削減PJ」を立ち上げ、役員自らPJリーダを担い、業務の削減や見直しを行いました。
システムやTeamsなどのオンラインツールを導入したりすることはもちろん、原則週2回出社を目安に、在宅勤務を活用しながら働く時間や場所の柔軟性を高めています。
また、face to faceのコミュニケーションがとれるようにオフィス環境の改善に取り組みました。今では柔らかさのある居心地のいい環境になりました。

評価項目についても、営業実績や利益という結果だけでなく、「生産性」や「人材育成」「働きやすい職場環境づくり」などプロセスや環境といった、支店の健全経営に欠かせない要素に着目した評価制度を整備しています。
有給休暇についても必ず休むように計画・促進をしていて85%近い取得率です。 カンパニーというシステムを導入しており、1時間単位や分単位でも取得申請できるようになっています。

Q. 2024年4月より、2027年4月までの3年間を見据えた 「第二期女性育成プログラム」が始動しているそうですが、新たに実施する施策はありますか?

昇進に対する不安解消のため、翌期の昇格予定者でサポートを希望する女性社員を対象に、同職種の女性管理職がメンターとなって、マンツーマンサポートを行います。
また、昇進後の孤独感や不安等を解消するために、昇進後6カ月が経過した女性管理職を対象に、ダイバーシティ推進部が個別にヒアリングを実施して、フォロー不要となるまで継続します。
公平性という観点で小さな階段を着実に上ってもらうサポートができればと考えていますね。

多くの企業が人材の採用獲得には以前より苦労してきていると思いますが、引き続き弊社もDE&Iや人的資本経営の改革を進めて、営業を中心とする人材の獲得や誰もが働きやすく、働きがいのある会社を目指していきたいと思います。

大東建託株式会社

ダイバーシティ推進部 宮﨑 緑

2006年大東建託株式会社入社。
山口県内の支店のテナント営業課(現、大東建託リーシング ルームアドバイザー職)にて従事したのち、2012年より本社にて教育部門にて企画と指導業務に従事。
2016年以降ダイバーシティ推進課(現、ダイバーシティ推進部)として大東建託におけるDE&Iの取組みをけん引。


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