ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。
今回は、1人で始めた美容サロンを女性100%の大きな組織に育てた株式会社Mahaloの代表取締役/松井裕香氏にお話を伺いました。
<企業概要>株式会社Mahalo(本社:横浜市)
設立:2009年5月9日
資本金:5000万円
従業員数:151名(24年8月現在)
※女性社員比率、女性管理職比率100%、直近3年間の産休・育休取得人数11名
事業内容: 美容サロン運営・ヘアケア事業(プロダクト開発、小売)・フェムテック事業(プロダクト開発・小売)
Q. 貴社では女性のリーダーシップを開いていこうという教育に力を入れているそうですが、どんな取り組みなのでしょうか?
小さなサロンを1人で始めて15年目になります。当時から美容業界は技術教育がメインで他業界が当たり前に取り入れている人間力やマネジメント教育がしっかりと浸透していないため、社会的な地位や低賃金労働、早期の業界離脱などの課題感がありました。そんな業界にいる中で、目の前で働く女性たちをもっと美容業界で継続的に輝かせ、成功させたい、自立させたいという思いがありました。
当社は、独自のリーダーシッププログラムを構築し、キャリア面談や成果の分析をおこなっています。20代後半から30代はライフステージの変化を迎える人が多いなか、キャリアビジョンを描いている人が迷わないように不安に寄り添い1人1人を支援しています。
子どもがいる社員も積極的にエントリーしています。
共通のビジョンを浸透させるため、私からもコラムや動画などを通してしっかり共有しています。コミュニケーション強化やチームワーク促進を浸透させるために、年に2回ほど全社総会を開催し、役職やステージ毎に研修も多く実施しています。 店舗や役職ごとのチームワークを強化するため、みんなでランチに行ったり、スタッフ同士で「ありがとう」を伝えるカードを送ったりする文化もあります。

Q. 平均年齢26歳ということですが、今の女性社員たちはどんな不安や課題感をもっていてそれにどうアプローチしているのでしょうか?
美容業界の平均定年年数は40歳だと言われてきました。これは年収の増加とも比例しています。
女性はさらに体力的もキャリアビジョン的にも厳しいイメージで「長く働けない」という意識をもっています。
一方で、今まで本人が培っている知識や技術は確かなものなの。
教育視点にシフトしていけば、お給与も上げていくことが可能になる。その結果、女性活躍が業界に浸透しさらにもっと良くなると考えています。 私はずっとマネジメントをしてきて、女性は自分が豊かになるだけではなくて、人や社会や仲間など、誰かのためになりたい、支えになりたいという気持ちをもっている人が多いように思います。
Q. 真の女性活躍に大切なことは何だとお感じですか?
私が伝えたいのは女性活躍の方向性です。
環境を整備したり、福利厚生など女性が働きやすくする取り組みはとても大切ですがそれだけで終わらせるのではなく、
「女性にも立場をしっかり与え責任をしっかり与えていくこと」が必要だと考えます。
女性はライフイベントの際に、自分自身のことに集中しがちですが、同時に『誰かのためになりたい、支えになりたい』という気持ちを持ち続けることも大切です。会社側は、ライフイベントを尊重しながら、業務の継続性を確保するための計画や引き継ぎの方法について話し合い、支援を行うことが重要です。女性が自ら計画を立て、周囲と協力しながら進めることで、自分自身と周囲の環境をより良く管理する機会となります。ライフイベントを通じて、双方が成長し理解を深め合うことで、結果的にその人自身の立場や仕事に対する責任感がより高まることが大事だと考えています。
人生をどこかで「男性に頼ればいいかな」と思うのではなくて、男女フェアであるとはどういうことか?を考えてもらうことも大切です。
例えば夫が骨折して仕事ができなくなったら、その分を私が埋めるからね、といえること。これこそがまさにフェアなジェンダーの考え方。
男女ともに通用する責任感が大事だと常に社員には伝え続けています。

Q. 社員に対する性教育も充実させているそうですね。
【SRHR(性と生殖に関する健康と権利)】をもとに行う「性教育」をおこなっており、「自分で選択できる人生」にするための知識をテーマにしています。
女性特有のホルモン(PMSやPMDDなど)のお話や、対処法を助産師のアドバイスやフェムテックマイスターの講師のもとで学び、性感染症専門の方から正しい避妊方法や性病についての知識を学びます。
予期せぬ妊娠・出産でライフプランは一変してしまいます。
女性もライフプランをきちんと自身で考え選択できる機会をつくる。自分の人生は自分で管理できる、という理解を促進していく狙いです。
受け身ではなくフェア
人生をセルフマネジメントする という理解を通じて、
自分のことを大事にする ということに繋げてもらいたいですね。

Q. 経済状況が悪化しているのをみている若い世代の女性でも受け身の考え方や自立するという意識が弱いというのは意外でしたが、そんな中でもリーダーを目指すようになっていく方が多いというのはフォローがしっかりしているからなのでしょうね。
育児休業をして1年後に帰っているという仕組み自体は他社と変わらない普通の制度ですが、休暇中に何度も面談するなどフォローアップをしっかりして、職場に帰ってきやすい環境はつくっています。
普通は出産・育児を経て「時短だから遠慮しよう」など守りに入ってしまう人が多いと思いますが、弊社では産育休から復帰したあとでも「リーダーになりたい」「先生やマネジメント側になりたい」とエントリーに手を挙げる人が多くいます。
それは、フォローアップ体制と同僚や先輩など身近な人が輝いているロールモデルが大きく影響していると思っています。 近くにいる人を見て、「私も変わりたい」と刺激を受けるようになりどんなライフイベントがあっても成長したいと思うメンバーがたくさんいることが弊社の強みでもありますね。

松井 裕香|MATSUI YUKA
美容サロン経営・美容師・サロン向けコンサルティング・セミナー運営・オリジナルプロダクト製造開発・フェムケア事業 (株)Mahalo 昭和音楽大学から東京マックス美容専門学校卒。
音楽の道から夢だった美容師へ転身し、大手サロンで人気スタイリストとして成功。2009年に横浜でサロンを開業し、瞬く間に人気店へと成長。その後「REGALO」を始めとする多彩な美容事業を展開し、2021年にはオリジナルプロダクトを開発。さらに、2022年にはフェムケア事業を立ち上げ、女性の健康とエンパワーメントに尽力しています。現在、関東・関西・九州に店舗を拡大中で、若い女性の活躍を支援している。独自の内面教育・性教育と評価制度は高く評価され、Forbes JAPAN WOMAN AWARDを3年連続で受賞。フェムテック事業「mycy」も展開し、女性の社会進出を支援する活動に注力。東京都主催の女性経営者塾で講師を務めるなど、多くの女性起業家を導く活動も行っております。
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