ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。
今回は、ホットクレンジングゲルなどの化粧品「マナラ」で有名な(株)ランクアップの岩崎裕美子社長にお話を伺いました。
<企業概要>株式会社ランクアップ(本社:東京都中央区銀座)
設立:平成17年6月
資本金:1000万円
従業員数:105人(2024年10月時点)
※社員比率 男性17% 女性83%(管理職比率 男性25% 女性75%)
売上高:137億円(2024年9月期)
事業内容: オリジナルブランド「マナラ」「アールオム」「アクナル」の開発および販売、スクール型民間学童「クレイバーキッズ」の運営
Q. 出産したらクビが当たり前のブラック企業出身で、「出産しても辞めずにずっと活躍し続けられる会社を自分でつくろう」と起業されたと伺いました。
39歳で結婚、41歳で出産しましたが、ブラックな広告代理店にいた時と違って、結婚・出産しても一生働き続けられる会社をつくりたいと考え同僚と2人で立ち上げました。ママであってもママじゃなくても、時短でも時短じゃなくても、挑戦し続けたい、活躍し続けたいという想いのある人たちと働きたいという想いで起業しました。
長時間労働がなくなり、時短で働きたい人は時短で帰る。という風土なので、「ママになってもキャリアアップをあきらめない。」が実現できています。
仕事と子育ての両立は、多くの女性社員にとって現実的な課題であり、会社にとっても成長の鍵を握る重要なテーマです。だからこそ私たちは、単なる制度設計を超え、社員一人ひとりのライフステージに寄り添って、仕事も子育ても諦めない環境づくりに力を入れてきました。男性で育休を取得した社員もいましたが、出産は何か月も前からわかるので、計画的に業務は振り分けられました。
Q. その代表的な取り組みで、長年の試行錯誤でひとつずつ生まれてきたという独自の「7つの子育てランクアップ!術」について教えてください。
「7つの子育てランクアップ!術」は以下です。
①1時間休暇制度:子どもの通院など、急な用事にも対応できるよう、有給休暇を1時間単位で取得可能です。小中学生の授業参観や歯医者、治癒証明の取得などで利用率が高いですね。
②出社&リモートのハイブリッド勤務制度:各自の業務内容に応じて出社とリモートワークを自由に組み合わせて勤務できます。(出社してもしなくてもよい)
③スーパーフレックス制度:病気や休校などの事情で、出社・退社時間を柔軟に変更することができます。
④育業体験制度:子育て経験のない若手社員が、子育て中の社員の家庭で家事や育児を体験。リアルな子育てを経験することで、相互理解を深め、社全体で子育てをサポートする意識を高めています。
⑤子連れ出勤制度:預け先が見つからない場合でも、子どもを連れて出社することが可能です。
⑥病児シッター制度:子どもの急な病気にも安心して仕事に集中できます。
⑦土日働いていいよ制度:やむを得ない事情で平日に休まなければならない場合でも、土日に振り替えて勤務することが可能です。
社員一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境を追求した結果、復職率100%の達成や、子育て中のママ社員の昇進・キャリアアップ実績の着実な向上など、具体的な成果として表れていますね。


Q. 出社しなくてもよいとコロナ禍以降に変えたことでコミュニケーションや文化醸成の課題はでなかったですか?
弊社は最低でも週1掃除当番で出社するのと、毎朝8時半から全体朝礼と部署朝礼があります。オンライン時は必ず画面オンというルールがあり全体だと人数が多いので画面に入りきらないですが(笑)顔を合わせているので課題は感じてないですね。
Q. 残業削減は起業当初から取り組まれていましたが、推進で大事なことは何だと思われますか?
起業当初から、残業削減は意識していましたが、本気で取り組んだきっかけは、私の出産でした。仕事と子育ての両立が辛すぎて、本当に驚いたのです。これでは、社員は出産したら子育てが辛すぎて、みんな退職してしまう!という危機感から、残業撲滅を本気で推進しました。せっかく仕事を覚えてバリバリと活躍している社員たちが、出産と同時に退職してしまっては会社が立ち行かなくなってしまうからです。
このように、残業削減をするためには、どうして残業しない会社にしたいのか?目的をはっきりさせることが大切だと思っています。はっきりしていないと、ノー残業DAYを作るなどの単なるポーズになってしまうし、すぐ残業体質に戻ってしまいます。私は、会社が残業削減をするためには、下記の2つとても重要と考えています。
1、なぜ残業しない会社にしたいのか?目的を決めて周知する
2、仕事が終わらない社員の業務を解決する仕組みを作る
Q. しっかりとした商品・利益のビジネス基盤と、理念の発信、制度や文化のセットで御社の仕組みが成り立っているんですね。
例えば16年目の広報社員は、独身で入社してシングルでも、「この会社だからこそ全ての子どもの行事にいけていたり負担なく働き続けられている」と言ってくれています。ワンオペのママや介護、パパなどどんな人もやりがいをもって働き続けられる会社だからこそ優秀な人が入社し定着しているのだと思います。社内行事でやハーフ成人式、服やおもちゃのリユースマーケットなどさまざまな場があり、社員の子どもは、みんなが親戚のように見守り育てている感覚で心強さもあるという声も多いです。



岩崎 裕美子
株式会社ランクアップ 代表取締役
新卒でJTBに入社。その後、広告代理店へ転職。営業成績トップとなり営業本部長として活躍したが、ブラックな働き方を続けたことで肌がボロボロになり、10歳も老けてみられることに悩んだ経験から、自分で肌を美しくするために化粧品会社を起業。苦労の末にマナラ化粧品を開発し2006年に販売をスタート。多くの女性に支持され、今では日本だけでなく台湾などアジアにも進出している。「たったひとりの悩みを解決することで、世界中の人たちの幸せに貢献する」という理念のもと、悩み解決カンパニーを目指している。また長時間労働を禁止し、子育て中の社員が活躍しやすい制度を導入。独自の取り組みで楽しく、働きやすい環境を築いていることで、出産しても不安なく働けるため復職率は100%を達成。女性活躍推進企業として多くのメディアに取り上げられている。