一般社団法人ウーマンエンパワー協会

【取材】男性育休3%→95%/ウルトラCはなく地道に味方を増やす/株式会社タカギ

約6分

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。

今回は、家庭用浄水器や園芸散水用品で高いシェアを誇る九州の老舗メーカー、(株)タカギにお話を伺いました。

<企業概要>株式会社タカギ(本社:福岡県北九州市)

設立:1961年5月

資本金:9千8百万円

従業員数:男性681名、女性753名 合計1,434名 ※2025年3月末時点
(男性47.5% 女性52.5%)

事業内容: 家庭用園芸用品、家庭用浄水器、省エネ商品の開発、製造、販売・プラスチック射出成形加工・金型事業

Q. 歴史の長い御社では採用基準はどのように変化されてきているんでしょうか

創業者から新しい経営体制となる中で、トップだけが常に牽引するのではなく、社員ひとりひとりが個性を発揮できる、ボトムアップ風土を醸成しようという新しい動きがありました。できるだけ性別を軸とした採用要件を削減し、個性を尊重して、既存スキルだけでなく、伸びしろを重視した採用にしています。対面でより会社を知っていただく機会も増やしましたが、会社業績や福利厚生などの待遇に対する安心だけではなく、安心して個性を打ち出していいのだという点に好印象をもっていただけているようです。
力仕事などから、男性が多い職種も中にはありますが、今後技術などで解決されていけばさらに性別の壁を解決していけると考えています。
24年に新しく誕生した本社工場には託児所を併設したり、200人程度が収容できる社員食堂もつくって働きやすい職場環境をさらに整えています。

Q. 色々な部署があると思いますが、働き方・休み方はどのように取り組まれてきたのでしょうか?

コロナ終息後は、原則出社の体制に変わりつつはあるものの、一部の部署ではテレワークを実施しています。フレックス勤務者は営業・バックオフィス部門を中心に増加しています。
残業時間は全社的にみると20年頃からと大幅な変化はないですが(平均10時間前後)、抑止力をかねて残業時間はPCログと退勤時刻の差異など注意してみるようにしています。
有休取得については22年より「時間単位の取得」も認め、24年度の消化率が84.4%(平均消化日数14.7日)と高い水準を維持できました。
その他にも1年目社員向けにメンター制度を実施したり、キャリア意識につながる社内のロールモデルを提示したり、女性社員を対象としたコミュニティ運営や、学習補助制度、社内インターン制度等様々な制度や施策にトライしています。

Q. 男性の育休取得は3%→95%超えになったということですがどのような取り組みをされたんでしょうか?

20年9月に女性活躍推進プロジェクトが立ち上がりましたが、当時は女性管理職も少なく、女性活躍に対して、「総論賛成各論反対」という空気がありました。
そのなかで、2021年に「育トレ制度」を制定しました。ヒアリングすると評価や給与減を気にしている方が多かったので、有給休暇と別に20日の特別休暇を付与したんです。
男性は配偶者の出産を直前まで言わない方も多いので、プロジェクト全員で情報をキャッチし、男性育休対象者に個別で面談を実施。出産直後に男性がしっかりと育児参画することで産後うつを防げたり、妻の夫への愛情が後々上昇する等、エビデンスを元に男性育休取得の大切さを伝えたりしました。
育休中の業務の引継ぎもあるので、「育トレブック」という指南書には、出産3か月前までに社内相談するように記載しています。

人事のある男性も、制度を運用すべき側なのに当初は「絶対取らない」と話していたのですが(笑)、取得してみたら、子どもが自分の詰めたお弁当をおいしかったと完食してくれたり、ゆで卵すらつくれなかった家事力がアップしたりして、「育休良かった!」なんて言っていました。
その他の方も育休を通してお子さんや家族との時間を過ごし充実していたとの声が多数上がったそうです。
男性の育児休暇取得率は、当初3%(1日1人が取得)から、21年75%、22年91.6%となり、23年には95%を超えました。

Q. 評価制度や公正な機会という意味ではどういったことを推進されたんでしょうか?

評価基準はMBOとコンピテンシーの2軸ですが、24年度のVMV(ビジョン、ミッション、バリュー)の発表に伴って、コンピテンシー評価内容を刷新しました。
また22年度よりキャリア自己申告制度を制定しまして、24年までで約50名が希望を提出しているほか、ライフキャリアの支援を目的として、在籍6年以上社員に限り23年度より転勤可否を選択できるようにしました。

Q. 女性活躍推進やダイバーシティ推進の文脈で大事だと感じられたことや今後に向けた課題認識を教えてください。

前提として休暇を有給にすることも、しっかりした利益がないとできません。
ダイバーシティも女性活躍推進も意義、目的は素晴らしいものですが、その理解浸透においては弊社も同様に常に模索し続けています。どんなに良い考えや施策も、浸透させるためにはブレずに根気強く、丁寧に伝え続ける必要があると思っています。これだけやればOKというウルトラCの様な施策はないと感じています。
話を聞く機会、発信する機会を増やして、それを一緒に推進してくれる仲間も地道に増やしていく事で、いつか「当たり前」にしていくことを目指しているところですね。自社だけでは限界もあるので、タカギ以外の企業様と連携しパートナーシップを作っていきたいなとも思っています。
この取り組みは時代の変化の中で、今まで長時間労働などこれまでの働き方を乗り越えてきた方々から反対意見が出やすい分野です。
総論賛成・各論反対ということも起きやすいことから、トップの理解協力と、地道な推進がカギになると感じています。短期間でより利益や会社の発展につながるという実感をもてることを目指したいですし、みんなが楽しく長く働きたいと思ってもらえる職場を自分たちでつくっていけたらと思います。

株式会社タカギ ※お写真左から

総務人事部
部長 松田 理恵
総務人事部長を務める。2020年にDE&I推進プロジェクトを立ち上げ、現在はオブザーバーとして管轄。2025年 NewsPicks主催WE CHANGE AWARDS個人部門にて大賞受賞。2児の母。

総務人事部 人事課 
担当係長 名切 大樹
総務人事部・人事課にて、評価制度など各種制度の企画運用から労務管理、キャリア支援などに携わる。副リーダーとしてDE&Iプロジェクトを推進。 

総務人事部 人事課 
副課長 古賀 友規
総務人事部・人事課にて、主に人財開発領域を中心に、採用全般や社内教育の企画・運営を担当。リーダーとしてDE&I推進プロジェクトを推進。2児の父。

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