一般社団法人ウーマンエンパワー協会

【取材】枠組みを取っ払うことが価値創造に繋がる/株式会社ポーラ

約5分

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みを取材しています。

今回は、日本を代表する化粧品メーカーで初の女性社長が誕生している「ポーラ(POLA)」の人事戦略部チームリーダー/松場裕子氏にお話を伺いました。

<企業概要>株式会社ポーラ(東京都)

設立:1946(昭和21)年7月11日

資本金: 110百万円

従業員数:1,302名(2024年6月1日現在)
※男女比率約半数ずつ。パートを含むと女性比率78.1%、女性管理職比率32.9%

事業内容:スキンケア・メークブランドの展開、エステサービスなど、お客さまの求める「美」を様々な角度よりサポートし、国内外で事業を展開。

Q. 女性活躍という取り組みの考え方や具体的施策について教えていただけますか?

弊社は性別・年齢・子の有無などの壁を取っ払って、1人1人がWiLL(意思)を大事にしよう、多様な人が個性を発揮してお客様や社会に価値提供をしようという考え方を持っています。やらされ感や○○せねばならない、ではなくて、自分の「やりたい」がやりがいや成果の原動力になると思っており、その土壌をつくる上でDE&Iは欠かせません。

長い期間で4つのフェーズで推進してきました。
Ⅰ 育児にかかわる女性の継続就業
Ⅱ 制約がある社員の活躍
Ⅲ 全ての社員の活躍
Ⅳ 変革を生み出す企業へ

最初は現実問題として育児、介護、病気などの制約があっても両立できる環境整備が必要とされていましたので、育休復帰サポート手当や育児サービス補助、介護サービス利用補助、介護や傷病による時短制度などを整備していました。働き方もフルフレックス勤務としてコアタイムを廃止し、時間単位の有休制度やリモートワーク環境や制度などを整えました。


女性管理職を増やすという観点では、候補者のリストアップを2018年から始めました。
アセスメントという外部指標を使って、マネージメントが出来る力がある事や強みを明確にし、人事側から基幹職試験の受験要件を満たす人材リストを提示することで、上長側もこの人も任せられると意識しやすく、本人の自信を醸成することにもつながっています。
一般的に女性はできる自信がないと手を挙げない傾向がありますが、外部アセスメントという客観的な評価を使って、管理職を担う力を持っていることが分かることが、背中を押すサポートになっています。

働く地域が限定される社員に関してはどうしても自分に出来ることを限定的に捉えてしまいWiLLが出づらくなりやすいため、全国各地で働く女性社員を対象にした社内コミュニティを開設しました。メンター(部門長)や仲間との対話を通して、キャリアを見つめ直し自己理解を深める内省の機会、仲間とのつながりの場を提供しています。

また、社内の好事例共有などのインタビューも露出は男女どちらかに偏らないように意識していますね。

他にも性差に関わらず活躍できるよう、様々な健康課題に合わせた支援としてフェムテックにも取り組んでいます。 具体的には、不妊治療、卵子凍結などの検診・検査、治療費用の補助や、月経・更年期に関する情報提供・オンライン診療サービス、婦人科医によるウェビナーやカウンセリングなどです。

Q. 2021~2023年の産休・育休取得人数 男性29名、女性96名とのことでした。男性育休を1年取得した方もいらっしゃいますが、そのためにどういう引継ぎ体制や仕組みが必要でしたか?

育児休業については、本来は男女にかかわらず取得ができることは変わらないはずです。なので仕組みよりも意識や風土が男性育休の壁になっていると考え、まずトップが「男性育休100%宣言」のメッセージを発信しました。取得者の上長には育休取得に向けたハンドブックも配布しています。
さらに、公式Youtubeで動画配信をしたり、休職が昇格にマイナスにならないよう制度も改訂しました。

Q. 2024年8月の帝国データバンクによる1万社の調査では、女性管理職ゼロの企業が半数近くとなっています。管理職や意思決定者の女性割合を増やす上で必要なことは何だとお感じですか?

まずはパイプラインを太くしないと始まりませんので、管理職以前に前段の「候補者を増やす」からではないでしょうか?
そのうえで、環境整備はもちろんのこと、意識改革や育成をしていくことだと考えています。
一方的に配慮するのではなく、本人の意向を確認して成長やキャリアを支援していくことが大事だと思いますね。

Q. 全社員の働き方、文化醸成という観点で取り組まれていることを教えてください。

個人の業績評価制度の一部に「中長期変革目標」というものを設定していまして、自身が会社や社会に対して変革を実現したいことと会社のビジョンの重なる目標を組み込むようにしています。
最近ではそんな制度から始まった有志の取り組み広がり、LGBTQの活動も進んでいます。

また、全社の組織風土改革の取り組みとして、「尖れ、つながれ」をスローガンに従業員1人ひとりが個性を発揮して共創していくことを目指して様々なイベント・施策を行っています。そのうちの一つが「尖れ、つながれカンファレンス」です。
Like & Share をコンセプトに、社内にあふれているチャレンジングな取り組みを、全社員で共有・称賛し合い、学び合うことを目的とした全社イベントです。

松場 裕子

IT企業での金融系SEの経験を経て、株式会社ポーラに入社。
情報システム部にて肌分析システムなどカウンセリングシステムを担当。
その後人事戦略部 ワーキングイノベーションチームに異動後は、
はたらき方改革、D&Iなどを主に担当し、
現在は同部署のヒューマンバリューチームにて、
組織風土改革、人材育成、人事制度企画/運用などに取り組む



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